Debian の安定版が進化してリリースされるまでにはかなり長い時間がかかるので、アップグレードの前にリリースノートを読むべきです。
この節では、特に Wheezy システムを Jessie にアップグレードを行う場合について解説します。システムのアップグレードはシステムに甚大な変更を加えます。このため、危険が全くないわけではありません、すべての重要なデータをバックアップする前にアップグレードを実行するべきではありません。
アップグレードを簡単に (短く) 実行するために身に付けるべき良い癖の 1 つに、インストール済みパッケージを整理整頓し、本当に必要なものだけを残すことがあります。これを行う便利なツールが
aptitude
、
deborphan
、
debfoster
(
第 6.2.7 節「自動的にインストールされたパッケージの追跡」参照) です。たとえば以下のコマンドを実行した後、
aptitude
の対話型モードで削除予定としてマークされたパッケージの再確認と微調整を行うことができます。
# deborphan | xargs aptitude --schedule-only remove
さて次に、システムのアップグレードを行います。最初に /etc/apt/sources.list
ファイルを変更して、APT にパッケージの取得先を Wheezy から Jessie に変更するよう伝えます。このファイル中でコードネームではなく安定版へのリファレンスを指定している場合、この変更は必要ありません。なぜなら、安定版は常に Debian の最新リリース版を指しているからです。どちらの場合でも、利用できるパッケージのデータベースを更新してください (apt update
コマンドを実行するか synaptic
の更新ボタンを押してください)。
一度新しいパッケージソースが登録されたら、あなたは最初に apt upgrade
を使う最小アップグレードを実行するべきです。アップグレードを 2 段階に分けて行うことにより、パッケージ管理ツールの仕事を軽減し、パッケージ管理ツールが最新のバージョンになっていることが保証されます。パッケージ管理ツールには、バグ修正が山積みになっているかもしれませんし、ディストリビューション全体のアップグレードを完了させるために必要な改善が含まれているかもしれません。
最小アップグレードが終了したら、apt full-upgrade
、aptitude
、synaptic
のうちどれか 1 つを使って、ディストリビューション全体のアップグレードを行います。提案された動作を適用する前に注意深く確認するべきです。具体的に言えば、提案パッケージを追加したい場合や、推奨されたけれども使いにくいと知っているパッケージを除外したい場合があるかもしれません。いかなる場合でもフロントエンドは、一貫性が保たれて最新の Jessie システムになるような、解決策を用意します。管理者に要求されるのは、パッケージがダウンロードされるまで待って、Debconf とマシンに合わせて変更された設定ファイルの保存可否に関する質問に答え、APT が仕事を終えるまで見ているだけです。
6.6.2. アップグレードの後から問題を取り扱う
Debian メンテナの最大限の努力にも関わらず、システムのメジャー更新は常に望んだ通りに順調に進むわけではありません。新しいソフトウェアバージョンは古いものと互換性がないかもしれません (たとえば、デフォルト動作やデータフォーマットが変わっているかもしれません)。また、いくつかのバグは Debian リリースに先んじるテスト段階を経たにも関わらず見過ごされているかもしれません。
いくつかの問題を未然に防ぐために、apt-listchanges パッケージをインストールすることが可能です。apt-listchanges は、あるパッケージのアップグレード作業の最初に、このパッケージのアップグレードを行うことで生じる可能性のある問題の情報を表示します。この情報はパッケージメンテナがまとめたもので、ユーザが確認できるように /usr/share/doc/package/NEWS.Debian
ファイルに含まれています。これらのファイルを (場合によっては apt-listchanges を通じて) 読めば、予期しない驚きを避けることが可能です。
あるソフトウェアの新しいバージョンが全く動かないことに気付くことがあるかもしれません。これは通常、そのアプリケーションがそれほど人気ではない場合や十分にテストされていない場合に起こります。さらに、リリース直前の更新によって、それまでに存在しなかった不具合を混入することがあり、この不具合は安定版がリリースされた後に見つかります。どちらの場合でも、最初にやることはバグ追跡システム https://bugs.debian.org/package
でこの問題が既に報告されているか確認することです。まだ報告されていなければ、reportbug
を使って自分で報告するべきです。既に報告されていれば、バグ報告と関連メッセージは通常バグに関連する情報の素晴らしいソースです。
重大なバグの場合、パッケージの新しいバージョンが安定版リリースに対する新しい改訂版として用意されているかもしれません。この場合、修正されたパッケージは Debian ミラーの
proposed-updates
セクションから提供されます (
第 6.1.2.3 節「提案された更新」を参照してください)。対応するエントリを一時的に
sources.list
に追加して、更新されたパッケージを
apt
や
aptitude
からインストールできます。
修正されたパッケージがまだ
proposed-updates
セクションから提供されていないことがあります。これは、安定版リリースマネージャによる妥当性の確認が終わっていないからです。パッケージが公開待ち状態にあるかをウェブページから確認できます。このウェブページに載せられたパッケージはまだ利用できませんが、少なくとも公開待ち状態であるか否かを確認できます。